腑に落ちるから行動が変わる。

カウンセリング「大人の学校」

「伝え方が大切だ」「コミュニケーションスキルを磨こう」。そういった言葉をよく耳にしますし、関連書籍も山ほど出ています。実際に試してみると、一時的にはうまくいくことも多いでしょう。しかし、気づけば面倒になり、結局は元のやり方に戻ってしまう…そんな経験はありませんか?

顕在意識と潜在意識のギャップ

なぜ、せっかく効果があると感じたのに、続かないのでしょうか? その原因の一つに、人間の意識の構造があります。私たちは日頃意識している部分(顕在意識)が約5%であるのに対し、無意識のうちに私たちの行動や思考を司っている部分(潜在意識)が約95%を占めると言われています。

いくら「こうしよう」「こうあるべきだ」と頭で理解し、意識的に行動しようとしても、たった5%の顕在意識だけでは、95%の潜在意識が持つ「面倒だ」「やりたくない」という感情には抗えません。これが、やがて行動が続かなくなる大きな理由です。

巷では「潜在意識を書き換えましょう」という話もよく聞きますが、もしそれが簡単にできるなら、私たちは誰もが理想の自分になれているはずです。

たとえば、医者から「甘いものを控えてください」と言われた糖尿病の患者さんが、頭では理解していても、つい甘いものに手が伸びてしまうのはなぜでしょう?

  • 「もっと運動しなきゃ」と思っていても、ソファから動けないダイエッター
  • 「早起きして勉強しよう」と決意しても、二度寝してしまう学生
  • 「禁煙しよう」と誓ったのに、気づけばタバコを吸っている喫煙者

これらはすべて、顕在意識では「やった方がいい」「やめたい」と思っていても、潜在意識がそれを「ノー」と拒否している状態です。「健康のため」「痩せるため」といった知識だけでは、人間の根深い習慣を変えることは難しいのです。

腑に落ちる瞬間が「潜在意識の書き換え」

では、どうすれば潜在意識レベルから行動を変えることができるのでしょうか? 筆者の経験からもわかるように、その鍵は「腑に落ちる」ことにあります。

筆者は糖質制限をしていたため、ご飯やパン、麺類を一切食べなかったそうです。しかし、ある時「食べすぎは良くないけれど、多少食べるくらいなら問題ない」ということが腑に落ちた。これは、単なる知識として知ったのではなく、自分の中で納得し、確信できたということです。その結果、今では無理なく適量を食べられるようになったと言います。

これはまさに、頭で考えたから行動を変えたのではなく、心から納得した結果、自然と行動が変わった例です。一般的に「潜在意識の書き換え」と呼ばれるものは、このような「腑に落ちる」体験によって引き起こされるのではないでしょうか。

「腑に落ちる」が習慣を変え、現実を変える

「潜在意識を書き換える」と聞くと、何か特別なメソッドが必要に思えるかもしれません。しかし、重要なのは、それが「潜在意識の書き換え」という言葉で表現されようと、「許可する」という言葉で表現されようと、結局は自分が心から納得し、受け入れること、つまり「腑に落ちる」ことなのです。

一度腑に落ちてしまえば、私たちの習慣は自然と変わります。そして、習慣が変われば、行動が変わり、結果として現実も変わっていくのです。

「あれがいいらしい」「これが流行っているらしい」「これに効果があるらしい」といった他者の情報や知識だけで行動しようとしても、それはあなたの潜在意識には響きません。まるで、議案が95%の潜在意識によって否決されてしまうように、結局は続きません。それは、あなた自身の「腑に落ちる」という納得感がないからです。

しかし、もしあなたが「腑に落ちた」なら、それは潜在意識の95%が「可決」に回り、全会一致でその行動が承認された状態と言えるでしょう。そうなれば、意識しなくても、自然と行動が変わり、あなたは本当の意味で変化を遂げることができるのです。

だからこそ、誰かの言葉や流行に流されるのではなく、あなた自身の心と深く向き合い、心から「腑に落ちる」瞬間を大切にしましょう。それが、あなたの人生を根本から変える、最も強力な原動力となるはずです。

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