私たちは時々、
「感謝の気持ちを持ちましょう」
「感謝を忘れないように」と言われます。
まるで、感謝は意識して行うべき行動のように捉えられているかもしれません。
実際に日常生活の中で、「この場面は感謝を伝えた方が良いな」と感謝するかどうかを多少なりともジャッジして「ありがとう」という言葉を伝えているかと思います。
もちろん、感謝の言葉を伝えることは大切ですが、
感謝とは、もっと自然に湧き上がってくるものなのではないでしょうか。
「当たり前」の向こう側にある、他者の存在
感謝がわざわざするものではなく、
自然と「ありがとう」という気持ちになる。
その鍵となるのが、「自分と他人の線引き」を
しっかりと行うことだと私は思います。
自他の線引きができている状態とは、
自分は自分の責任でできることを行い、
他者は他者の責任でできることを行っている、
という明確な区別がある状態です。
この時、お互いの領域が尊重され、
曖昧な部分がなくなります。
例えば、あなたが会社員として働いているとします。
毎日会社に来て仕事をしてくれる同僚や上司、
そして会社を経営し、働く場所を提供してくれる経営者の存在は、
決して「当たり前」ではありません。
なぜなら、彼らの行動は、
あなたがコントロールできることではないからです。
コントロールできないことは、与えられた恩恵
自分がコントロールできないことは、
他者によってもたらされた恩恵や幸運と捉えることができます。
それは、誰かがあなたの時間を大切にしてくれたり、
あなたの仕事を手伝ってくれたり、
あなたの存在を認めてくれたりする、
目に見えない贈り物のようなものです。
具体的な例を挙げてみましょう。
- 家族の場合: 家族があなたの帰りを待っていてくれる、
美味しいご飯を作ってくれる、体調を気遣ってくれる。
これらは、家族がそれぞれの意思で、
あなたのために時間や労力を使ってくれている行為です。
あなたが「当たり前」だと思ってしまいがちな日常の中に、
実はたくさんの感謝の種が隠されています。 - 友人の場合: 友人があなたの相談に乗ってくれる、
一緒に楽しい時間を過ごしてくれる、困った時に助けてくれる。
これらは、友情という特別な繋がりの中で、
友人があなたに与えてくれるかけがえのないものです。 - 仕事の場合: 同僚が難しい仕事を分担してくれる、
上司があなたの成長をサポートしてくれる、
取引先が円滑な取引に応じてくれる。
これらは、それぞれの立場で、
相手がプロフェッショナルとして仕事に取り組んでくれるからこそ成り立つものです。
心の境界線が、感謝の気持ちを育む
もし、自分と他人の線引きが曖昧だと、
「相手が自分のために何かをしてくれるのは当然だ」という感覚に陥りやすくなります。
相手の行動を自分のコントロール下にあるかのように錯覚してしまうため、
感謝の気持ちが湧き上がりにくいのです。
しかし、しっかりと自他の境界線を引くことで、
「相手が自分のために時間や労力を使ってくれることは、決して当たり前ではない」という事実に気づきます。
その時、初めて相手の行動は、
自分にとって貴重な「与えられたもの」として認識され、
感謝の気持ちが自然と心の中から湧き上がってくるのです。
感謝は、頭で理解するものではなく、心で感じるものです。
そして、その心の動きは、
自分と他者を尊重する明確な境界線があるからこそ、
より豊かに、そして自然に生まれてくるのではないでしょうか。
日常の中に溢れる小さな「与えられたもの」に気づくことで、
私たちの世界は、もっと温かく、感謝に満ちたものになるはずです。