「抽象度を上げる」と聞くと、
「色」という大きなカテゴリーでまとめるような話がよく出てきます。
赤が好き、青が好き、ピンクが好き
また、食べ物ならば
カレーライスが好き、チャーハンが好き、オムライスが好き
これらの抽象度を上げるならば
コメ料理、さらにもっと上げると、ごはんになるかと思います。
ただ、これだけだと、
この抽象的な視点というのを、どのように私たちの日常生活に生かすことができるかが
わかりにくいですよね。
「抽象度を上げる」とは、
単に物事を大ざっぱに捉えることではありません。
それは、物事の本質を見抜き、共通点を見出すことで、
これまで見えていなかった解決策や、より自由な選択肢を見つけるための思考法なのです。
異性への「幻想」という名の「具体化」の罠
この「抽象度を上げる」ことのパワフルさを理解する上で、
私達がしばしば抱く異性への「幻想」が非常に分かりやすい例になります。
例えば、
「女性はみんな可愛いものだ」
「肌が綺麗で、いつも良い匂いがする」といったイメージ。
さらに極端になると、「アイドルはトイレに行かない」のような、
現実離れした理想を持つ人もいます。
これらは、無意識のうちに「女性」という存在に、
様々な細かい「カテゴリ」を重ねてしまっている状態です。
抽象度が低く、どちらかと言えば、より具体的ですよね。
- 「具体化」の例(異性への幻想):
- 女性(抽象度が高い)
- → 可愛い女性/そうでない女性(細分化)
- → 肌が綺麗な女性/そうでない女性(さらに細分化)
- → ムダ毛処理をしている女性/していない女性(さらに具体化)
- → 黒髪ロングの女性/ショートヘアの女性(無限に細分化)
このように、あなたが心の中で「女性」という大きなカテゴリを、
「自分の理想に合うか」「モテるか」といった基準で、
どんどん細かく具体化していくと、どうなるでしょうか?
結果として、あなたの理想像は極めて細くなり、
実際にその全ての条件を満たす人はいなくなってしまいます。
たとえいたとしても、あなたはそこに過度な期待や「執着」を抱くことになります。
幻想がもたらす問題:なぜ「うまくいかない」のか
執着が生まれると、
あなたは相手に対して
「なぜこれをしてくれないの?」
「どうしてこうじゃないの?」と、
自分の価値観を押し付け、
期待通りにならないことにストレスを感じます。
そして、関係はギクシャクし、
最悪の場合は関係がこじれてしまうでしょう。
また、あなたは自分の高く掲げた理想と、
ありのままの自分を比較し、劣等感を感じるようになります。
「こんな素敵な女性(男性)と、自分は釣り合わない」と
勝手に距離を置いたり、
話しかけることすらできずに現実逃避をしてしまうこともあります。
※ただし、これは自覚がない。そう思いこんでいる。
考えてみてください。
あなたは、道ですれ違ったおばあちゃんや、
性的な魅力を感じない同性と話すときに、同じように緊張しますか?
ほとんどの場合、そうではないはずです。
緊張するのは、あなたが「綺麗で若い異性」を、独自のカテゴリに入れ、
そこに「幻想」を重ねているからに他なりません。
これは差別などではなく、
無意識の「具体化」のプロセスが引き起こす結果なのです。
「抽象度を上げる」ことで問題が解決する理由
では、ここで「抽象度を上げる」とはどういうことなのでしょうか?
それは、性別や年齢、見た目の美しさといった表面的なカテゴリを取り払い、
「目の前にいるのは、自分と同じ不完全な人間である」という、
より高い視点を持つことです。
要するにどの人も同じ、変わらない、
すごいとか、えらいとか、上とか、自分と釣り合わないなんてない。
- 「抽象度を上げる」例(異性関係):
- 黒髪ロングの可愛い若い女性(具体化された幻想)
これしか恋愛対象にならない。 - → 女性(もう少し抽象度が高い)
恋愛対象が広がる
若い人も年老いた人も、
美しい人もそうでない人も同じ。 - → 自分と同じく不完全な「人間」(最も抽象度が高い)
- 黒髪ロングの可愛い若い女性(具体化された幻想)
このように抽象度を上げると、驚くべき変化が起こります。
- 優劣や上下関係が消える:
どんなに年老いた人であろうと、
どんなに自分の理想に近い魅力的な人であろうと、
そこには何の差もなく、「自分と同じ一人の人間」として捉えることができます。 - 自然な態度で接することができる:
相手に対して幻想や期待を抱かないため、
変に構えたり、自分を偽ったりする必要がなくなります。
結果として、あなたは本来の自然な態度で、相手と接することができるようになるのです。(自分の本来持っている魅力が相手に伝わりやすい。) - 関係性の質が向上する:
相手の表面的な部分だけでなく、
その人の人間性そのものを受け入れようとする視点が生まれるため、
より深く、健全な人間関係を築くことが可能になります。
「抽象度を上げる」とは、単に物事を大ざっぱに捉えることではありません。
前述しましたが、
例えば、人間関係ならば、
私達が無意識に作り上げている
かわいいとか、若いとか、筋肉があるという
「幻想」や「思い込み」カテゴライズの箱から抜け出し、
抽象度をあげ、目の前にいる人は
若い人だろうと年老いた人だろうと
自分と同じ不完全な「人間」として捉えることで、
上下関係や優劣を感じることなく
同じ人間として対等、フラットな関係として
関わることができるようになるための思考法なのです。
これがデフォルトでできるようになったとき
同じ人間だけど、価値観や考え方がちがうだけなので
私もいいよね、あなたもいいよねになるわけです。


