「他人を信用できない」と感じる時、
私たちは人間関係において様々な苦しみを抱えます。
疑心暗鬼になり、安心して人と関わることができず、孤独感を深めてしまうこともあるでしょう。よく言われるように「他人は自分の鏡である」「他人は自分の投影である」という言葉だけでは、なかなか腑に落ちない方もいるのではないでしょうか。
今回は、「他人を信用できない」という心理の奥深くを探り、それがなぜ「自分を信用していない」ことの表れなのか、さらに詳しく言語化していきたいと思います。
他人を信用できない心の状態:それは他責、依存、被害者意識
他人を信用できないと感じる時、私たちの心の中では何が起こっているのでしょうか?多くの場合、それは人間関係における問題の原因を相手のせいにしている状態と言えます。
- 他責: 問題が起きた時、「あの人が〇〇したから」「〇〇してくれないから」と、原因を外部に求めます。自分の行動や感情に対する責任を、無意識的に回避しようとしているのです。
- 依存: 相手に期待し、「〇〇してくれるはずだ」「〇〇してもらうのが当然だ」という心理が働きます。自分の幸せや安心を他者に委ねてしまっている状態です。
- 被害者意識: 「いつも私が悪者にされる」「誰も私の気持ちを理解してくれない」と感じ、自分は不当な扱いを受けているという立場に身を置こうとします。
これらの状態に共通しているのは、問題解決の主体が自分自身にないということです。原因を他人に求めているため、「他人が変わってくれなければ、この問題は解決しない」という思考に陥ります。しかし、私たちは他人の言動をコントロールすることはできません。つまり、他人を信用できないと感じ、問題の原因を他人に置いている限り、
その問題は自分自身では解決できないということになってしまうのです。
解決を放棄し、人生から逃げ回る不信感
自分の人生にも関わらず、
問題解決を他者に委ねることは、
ある意味で自分の人生から逃げ回っていると言えるでしょう。
他人を信用できないという感情の裏には、
「自分が行動しても無駄だ」
「どうせまた裏切られるだろう」といった諦めや恐れが隠されています。
そして、問題を他人のせいにするのは、
「自分は悪くない」と正当化するための防衛機制でもあります。
自分の未熟さや課題から目を背け、
責任を回避することで、一時的に心の平穏を保とうとするのです。
しかし、
その根底には、
自分の人生を主体的に解決するつもりがない自分自身に対する不信感が存在しています。
自分の力で困難を乗り越えられない、
自分の判断や行動を信頼できないという思いが、
「他人を信用できない」という形で現れてくるのです。
「投影」とは:心の鏡に映る他人
では、「他人は自分の投影である」とはどういうことでしょうか?
「投影」とは、自分の心の中にある感情、欲求、恐れ、価値観などを、無意識のうちに他者に映し出して認識する心理現象です。
例えば、
- 自分が人に嘘をつくことがある人は、他人も嘘をつくのではないかと疑いやすくなります(自分の持つ「嘘をつく可能性」を他者に投影している)。
- 自分が心の奥底で人を批判的に見ている場合、他人からも批判されているように感じやすくなります(自分の持つ「批判性」を他者に投影している)。
- 自分が自信がないために周りの目を気にしていると、他人も自分のことを気にして見ているように感じてしまいます(自分の「自信のなさ」を他者に投影している)。
他人を信用できないと感じる場合、それは自分自身の中に「信用できない要素」が存在する可能性を示唆しています。それは、過去の自分の裏切り行為だったり、人に対して不誠実な態度をとってしまう傾向だったりするかもしれません。あるいは、「自分自身を信頼できていない」という根本的な不安が、他人に対する不信感として表れている場合もあります。
他人は、私たちの内面を映し出す鏡のような存在です。他人を信用できないと感じる時、私たちは相手の行動や言動を通して、自分自身の内面にある葛藤や恐れを見ているのかもしれません。
まとめ:「他人を信用できない」の根源にあるもの
他人を信用できないと感じることは、人間関係における苦しみの根源となります。しかし、その感情の奥底には、「他人のせい」にすることで問題を解決から遠ざけ、自分の人生から目を背けている状態、そして、自分自身を信頼できていないという現実が隠されています。
「他人は自分の投影である」という視点を持つことは、他人を理解するだけでなく、自分自身を深く理解するための重要な手がかりとなります。他人を信用できないと感じた時、立ち止まって自分の心の内側を見つめてみましょう。そこに映し出されているのは、他人ではなく、自分自身の姿かもしれません。
自分自身を信頼することから、他者との信頼関係は始まります。自分の課題に向き合い、主体的に人生を切り開いていく勇気を持つこと。それこそが、「他人を信用できない」という呪縛から解放され、より豊かな人間関係を築くための第一歩となるでしょう。

